パサパサ、モソモソ、飲み物なしでは食べられない。
そんな鶏ムネはもう卒業しませんか?
やわらかく仕上げる方法はたくさんありますが、結局焼き方しだい。
今日はふっくらジューシーに焼き上げる方法を、丁寧に解説します。
前回は鶏ハムのレシピを紹介しましたが、あれは低温のお湯で放っておくだけなので、誰でも簡単にできます。
今回は高温のフライパンを使って、ジューシーにする方法。
ぼくは温度計使うのは好きでないので、全部手に伝わる感触のみで解説します。
結局これが一番きれいに仕上るし、家でも簡単に真似できます。
今回も魚焼きグリルが活躍しました、ほんとに優秀。
材料
鶏ムネ 1枚
塩 肉の重量の1%
プロが教えるポイント

そのひと手間、無駄かもしれません
鶏ムネをジューシーに仕上げるコツでメジャーなのはだいたい3つ。
砂糖、重曹、水に漬ける。
言ってしまえば、どれも保水です。肉の中の水分を増やすって感じですね。
ただ、せっかく増やした水分も、焼き方次第で無駄になります。
保水しようがしまいが、焼き方さえマスターすれば、肉汁したたるジューシーな鶏ムネになります。
肉は常温に、塩は30分前に
肉は必ず常温に戻すこと。肉が冷たいということは、中に火が通るまで時間がかかる。
その間フライパンと接している面は、高温にさらされ続けます。
肉の中心が焼ける頃には、外側はパサパサ、モソモソ。なので必ず肉は常温に戻してから焼くこと。
美味しい肉には塩気も重要。中まで塩味が入っていない肉は不味いので、塩は焼く30分前にはしておきましょう。
作り方
塩をしてすぐ焼かない
鶏ムネは冷蔵庫から出して、冷たい状態で塩を振る。
厚いところは多めに、薄いところは少なめに。両面に振ったら30分、できれば1時間おいて常温に戻す。
最低でも表面の冷たさが取れるまでは、置いておくこと。
今回は塩レモンでマリネしたものを使いました。
以前紹介した、豚肩ロースと違って鶏ムネは脂が少なく、パサつきやすい。
保水のため砂糖をひとつまみ擦りこんでから、塩レモンでマリネするのがポイント。
今回は香りづけにタイムではなく、ローズマリーで。

袋ごと1時間おいて常温に。
1時間経ったら、表面の水気を拭き取る。マリネしたものならレモンを取り除いてから。

弾力を確かめながら焼く
焼く前に指でギュッと押して、弾力を確認。
繊維質を感じてブニブニ。ギュッと押すとゴリゴリした固さ。指は深く沈まない。
この「生肉」の感触を覚えてから焼き始めます。

フライパンを中火にかけ、たっぷりめの油。
あたたまったら皮目を下にしてフライパンに入れる。今回使った鶏は、皮が付いていなかったので皮なし。

このとき、魚焼きグリルを強火で10分予熱。
鶏の周りが軽くフツフツ沸くくらいをキープしながら焼いていく。
中火よりすこし弱い位の火加減。絶対に強火にしないこと。
時折フライパンを傾け、スプーンで油をすくって厚いところだけにかける。

表面の乾燥を防いで、油の熱でゆっくりと火が入ります。

3分でこのくらいの色。
色が薄いところをフライパンに押し付けるように、きれいに色付ける。


焼き色はこのくらい。あまり強く色付けると固くなるので注意。

綺麗に色付いていたら、裏返す前にまた指でギュッと押す。
ブニブニした生肉の感触は相変わらず。さっきよりも弾力は出てるけど、深く押したときのゴリゴリ感はまだある。
指を離した時の跡は、押したところの周囲も凹む。まだブニブニの生肉ってこと。


後ろも同じように焼いていく。
焼き色を付ける必要はないので、全体の色が白っぽく変わればOK。

また指でギュッと押して、離す。
さっきよりもハリがあって、プニっとした感触。ギュッと押すと、ゴリゴリ感はなく弾き返されるような弾力。
指の跡も押したところを中心に沈むように。


皮目を上にしてアルミホイルで包んで、予熱しておいた魚焼きグリルへ。
弱火で3分加熱する。

3分したら取り出し、そのまま5分、できれば10分置いておく。
この間に肉汁が肉の中に留まるのでジューシーに。
完璧なタイミングの見分け方
10分経ったら火の通りを確認。
指でギュッと押す。
弾力はあるけど、弾き返されるというよりグッと固さのある感触。指の跡も押したところしか残らない。


横から強めにつまむと一番わかりやすい。
ふっといゴムを押しつぶしてるような感触。固いでも柔らかいでもない。弾き返されるでも沈み込むでもない弾力。

強く押しても沈まず、指で繊維質を感じるくらい固く、弾力が一切ないようだと、もうパサパサ。
うま味の抜けた出しガラ状態なので、ガチガチにならないようにすること。
切る前に、表面の白いタンパク質を拭き取る。

まっすぐ包丁を入れて切るとブサイクなので、少し斜めに包丁を入れて表面積を大きく。

火を入れすぎてギュッと窮屈そうな鶏ムネと違って、断面はふっくら。繊維がのびのびしてる。
肉汁が詰まった、最高の火入れです。

仕上げ

ふっくらした鶏ムネは薄く切っても、厚く切っても美味しいです。
噛めば噛むほど水分が出てくるジューシーさは、まさにお店の味。
今回はバターライスに乗せて、バーニャカウダソースで。
プロヴァンス風トマトと、パクチーを添えて洋風カオマンガイにしました。
鶏がきれいに焼けていれば、なにやっても美味しいですね。